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ECaSS(R)に関する “FAQ よく出る質問と回答”

第1部:基礎的なトピックス

編集および回答:岡村廸夫

キャパシタは近年ポピュラーになりつつあります。ゆっくりとですが,世界はキャパシタが電力の貯蔵に使えることに気づきつつあります。そのテンポがゆっくりなのは何故かというと、キャパシタ蓄電というものが正確に理解されていないのが原因と思われます。

“FAQ よく出る質問と回答”のページは二つあって、第1部はここ、第2部はウェブ会員ページにあります。第1部では基礎的なトピックスとその回答を述べ、第2部ではもう一歩進んだ課題を扱います。ウェブ会員ページは登録が必要ですが無料で、当フォーラムでは名簿を販売したりはしません。より深い情報を必要とされる方はウェブ会員ページへお進みください。

Q1
現在使っている二次電池をキャパシタに置き換えできますか?
A1
いいえ、キャパシタは電池とは全く別の蓄電装置です。
この答えが皆さんを失望させることはよく分かっています。でも事実は事実で、電池とキャパシタは全く違うのです。臨時の実験なら、それまで使っていた電池をキャパシタに置き換えて試すことはもちろん可能です。しかし、キャパシタを使ったからこんな素晴らしい性能になった、といえる成果を生むには、キャパシタ専用の充電器と出力コンバータ(電流ポンプ)そして、キャパシタを何Vから何Vまで使うといったシステム設計が必要です。

なぜそんなに面倒なんだ、電池もキャパシタはどっちも同じ蓄電装置じゃないか、と抗議されるかも知れません。そうです。でも8頭立ての馬車とメルセデスは、どちらも同じ乗り物ですが、誰も片方を改造して他方を作ろうとはしないでしょう。

Q2
ECaSS(R)論文でキャパシタだけの評価をするなというのはなぜ?
A2
キャパシタでの改善は2-5倍、電子回路で4倍ですから
上の数値は大まかな値で、用途によって変わります。それでもECaSS(R)の約半分かもう少し多い改善が電子回路部分でもたらされているのです。

キャパシタだけでECaSS(R)を評価するのはサンドウィッチの出来栄えをパンだけかじって確かめるようなものです。どうか電子回路まで含めて評価してください。ECaSS(R)の流儀できちんと設計された電子回路が一緒でないと、そのキャパシタは単なる損失の大きな部品の山に過ぎません。

(本件については,もっと数値的な検討がFAQ第2部にあります)

Q3
キャパシタは二次電池より本質的に高価なのですか?
A3
本質的にではなく,現在高価なのは生産量が少ないせいです。
そう答えるには根拠があります。現在ECaSS(R)キャパシタに使っている材料や製造工程は高価な特別な物はありません。今は有機電解液を特別な醸造法で作ってもらっているので高価ですが、定期的に大量に使えば,絶縁油くらいの値段になることは分かっています。
(本件については、もっと数値的な検討が第2部Q58にあります)
Q4
ウルトラキャパシタ,スーパーキャパシタなどは同じ物ですか?
A4
こうした呼び名は問題を起こします。表1を見てください
ウルトラキャパシタ、スーパーキャパシタ、EDLC、電気化学キャパシタ、これらは異なるいくつもの種類を含んでいます。
一番大きな違いは,蓄電動作に化学反応を含むか否かです。真のキャパシタなら、化学反応は含みません。EDLCつまり電気二重層キャパシタで、電気二重層容量を正極、負極の両方に使っているものは真のキャパシタに属します。これを対称型(symmetric)キャパシタと呼ぶことがあります。

ところが両極が電気二重層のタイプはエネルギー密度を高めるのが難しいので、他の手段を探しキャパシタと二次電池のハイブリッドが開発されました。それは片極が電池、片極が電気二重層キャパシタとなっており、非対称型(asymmetric)キャパシタとも呼ばれます。この他に擬似容量を利用したタイプもあります。擬似容量という表現は別に軽蔑してつけた名前ではなく、電気二重層容量ではなく酸化還元反応を伴って発生する容量という学術用語です。

厳格に言えば表の”2.” と “3.” はキャパシタではありません。なぜならこれ等は主要な充電放電を化学反応に頼っているからです。その結果、これらは通常、真の電気二重層キャパシタよりも大きなエネルギー密度を持ちますが、寿命や充放電効率の点で電池同様の制約を受けます。

” ウルトラ、スーパー、電気化学 キャパシタ”と呼ばれるものの表

1.対称型電気二重層EDLC symmetric (pure EDLC)
 1-1. 水系Aqueous (water solution)
 1-2. 有機系Non-aqueous (organic) ←– ECaSS(R) キャパシタ

2.非対称電気二重層EDLC asymmetric (battery-capacitor, 50% EDLC)
 2-1. 水系Aqueous eg.: NiOOH – carbon
 2-2. 有機系Non-aqueous eg.: Li ion – carbon

3.擬似容量Pseudo capacitance (5 -10% EDLC)
 3-1. 金属酸化物Metal oxides eg.: RuO2
 3-2. 導電ポリマーConductive polymers eg.: p and n doped polymer

Q5
電気二重層キャパシタは電池より遥かに安全ですか?
A5
はい。特にAN(アセトニトリル)でなくPC(プロピレンカ?ボネイト)電解液を使ったものは安全です
ECaSS(R)グループのいくつかの会社が、PC電解液を用いたキャパシタを多量に搭載した製品の市販の許可を受け、販売に入りました。

しかし世界のキャパシタメーカーにはANを使わないと性能面で使い物にならない、との見解があります。それは、ANを用いると内部抵抗を等しくすれば蓄電量で2倍、蓄電量を等しくすると内部抵抗で1/3くらいに最適化でき、低温特性も断然優れているのでもっともな言い分です。しかしECaSS(R)は一般にキャパシタが普及したときの安全性を考慮して、PCを用いて目標をクリアーしてきました。

ご参考までに、ECaSS(R)キャパシタに釘を何本も打ち込んだり、トーチで焼いたり、アルコールランプで燃やしたり、定格の2倍まで過充電するなどの乱暴を働いた状況の、ムービーか写真を(株)パワーシステムのサイトで見ることができます。

(さらに詳細な説明がメンバーページのQ57にあります。)

Q6
キャパシタは小さいエネルギー密度をどう克服しますか?
A6
キャパシタは電池よりエネルギー密度が小さいとは限りません。
二次電池のエネルギー密度は非常に大きな値が公表されていますが、あれは寿命を考慮しない、言うなれば1放電だけの容量です。実際に充放電の激しい用途、例えばハイブリッド乗用車で50万回、商用車で300万回くらいの充放電には、放電深度を極端に浅く、5?10%で対応します。このため、実際に使える容量は公称値にこれら放電深度を掛けた値となります。

ECaSS(R)の技術では、内部抵抗を犠牲にしてエネルギー密度を高めるという手法をフルに使って、実使用条件下でのエネルギー密度を大きく得ています。
このため、実際に使われる条件では、キャパシタのエネルギー密度が必ずしも小さくはありません。この部分はECaSS(R)の技術の重要な鍵なので、詳細な説明は蓄電入門「ECaSS(R)の応用とその進展」ダウンロードページの英文論文11, 12をご参照ください。

Q7
キャパシタを直列にするとどういう問題が起こるのですか?
A7
個々のキャパシタが負担する電圧が均等に保てません。
個々のキャパシタの分担電圧の差は、各キャパシタの漏れ電流と静電容量、この2要素のばらつきによって生じます。その他の条件たとえば各キャパシタの内部抵抗や直列インダクタンス、試験中の充放電サイクルの数などは殆ど影響ありません。

この現象がハッキリわかるには長時間?たとえば6ヶ月?かかります。そのため1週間程度の試験をして問題ないと考え、後でトラブルを起こし電気二重層キャパシタへの信用を失う。といった状況を見受けることがあります。

本件はECaSS(R)の論文では何度も扱われています。英文論文ダウンロードページにある文献番号12の「もしあなたが幸運か短気なら」という項を、どんな現象が起こっているかわかるまで、注意深くお読みください。

Q8
キャパシタの直列にした際の問題はすべて解決されましたか?
A8
はい完全に,数千ボルトの直列接続も製作可能です。
この問題を理解するには通常、つぎのような段階があります。

①直列キャパシタの電圧が不均等になる問題に気づく
②抵抗、ツェナーダイオード、アクティブ回路など均等化方法を探す
③均等化で生じる、漏れ電流、効率、電力損、コストなどの問題に気づく
④均等化でなく並列モニタで初期化するECaSS(R)のメリットを認識する

最初の段階ではキャパシタを直列にしたとき、問題が生じるとは考えません。これは①以前の段階です。本件に関してはQ7でも記したように、多くの論文があります。ダウンロードページの(2),(4),(5)の論文やメンバーページのQ56もご参照ください。

Q9
実物のECaSS(R)の動作を体験する方法はありませんか?
A9
はい。ホンダのFCXを買うよりやさしい方法があります。
その代りに日産ディーゼルのトラックか、そうでなければ指月電機の無停電電源を御購入ください……確かにこれ等は正解です。しかし、少なくとも第一歩のためには、いくらか簡単で費用の少ない方法があります。

ECaSS(R) Forumは何も販売しませんが、このサイトのリンクで(株)パワーシステムに飛ぶと、ECaSS(R)用実験セットST3が約5万円で購入できます。470Fのキャパシタ4つに、充電器、並列モニタ、電流ポンプ2組、残量計までついて一枚の基板に組上げてあります。

詳細な説明がトランジスタ技術誌に4回連載されたものを、同社の許可を得てダウンロードページの(1)に掲載しました。それは日本語だけですが、添付の取扱説明書は日英両版選択できます。

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